SEOを釣り名人がわかりやすく解説します。
2013/05/13
会社のホームページをリニューアルする指示が下ったとします。
これまであまり関わらない分野だった方は、ネットや書籍で情報収集することでしょう。すると、たいてい出会うのが「SEO」と「CMS」という言葉です。
今回は、とくにわかりにくい「SEO」について、ある釣り名人を例に挙げて説明します。
この釣り名人は「町で一番釣りに詳しい」とされていますが、そう認められるまでのプロセスはSEOで検索順位1位を獲得するプロセスによく似ているのです。
釣り名人が「町で一番釣りに詳しい」と呼ばれているの図
A:釣り名人。釣りへの深い愛と造詣を日々語っている
- これまで釣った魚の写メで携帯がパンパン
- それぞれの仕掛け解説について話がとまらない
- 海、川、湖、持って行きたい竿ベスト3をアドバイス
- 釣りキチ三平が自分のことを「オラ」と呼ぶのは釣り名人の影響
- 今まで一番大きい釣果は八丈島
- 魚拓コレクションを全部広げると東京ドーム2つ分
B:犬の散歩中のBさんは釣り名人をこう評する
- 釣り名人? 名前はよく話は聞くよ、詳しいんだってね
- 見ればすぐわかるよ、帽子にもTシャツにも「釣り」って書いてあるし
C:井戸端会議中の主婦は釣り名人の噂でもちきり
- ねえ、あそこのスーパーのお魚、全部釣り名人が釣ったんですって!
- 釣るだけじゃないの、美味しい食べ方も教えてくれるのよ!
- うちの息子も釣り名人みたいになるって夢中なの〜
D:防波堤で海釣りするDさんは…
- やっぱり釣り名人おすすめの仕掛けだと、食い付きが違うね!
- よく新しい釣り方を聞きに行くんだよ
- 釣るだけじゃないんだよォ、あの人は。マナーも良くてね、釣り人の鑑だね。おっと、俺の心まであの人に釣られちまったネ
E:かつてのナンバーワン、釣り仙人も重い口を開く
- あのひよっこがのう…
- ワシに弟子入りしたいというモンが来ても、釣り名人のところへ行け、と云うとるんじゃ
一番詳しい、と認識される仕組み
このように、釣り名人が「町で一番釣りに詳しい」とされるのは
- 本人が釣りに対して豊富な情報を保有し、公開している
- 第三者が釣りのことならあの人に聞けば良いと思っている
- とくに釣りが好きな人、詳しいとされている人から一目置かれている
という条件を満たしているからです。
※ところどころ明らかにダイダラボッチ的ホラがまじっていますが、適宜スルーしてください。
検索エンジンが順位を決める仕組み
検索順位を決めるのはアイウエオ順でもなく、クリックされた数でもなく、企業規模の大小でもありません。
検索ワードに対しての「適切度」で決まります。
※「適切度」は便宜的に使った言葉ですので、一般にSEO業界で流通している言葉ではありません。
検索ワードに対して、Googleは自社の構築したインデックス(ネット上の膨大なページを索引化して保存してあるデータベース)の中から適切であると思われる順に表示します。
なにをもって「適切」とするかは、その検索ワードによって異なります。
人名(ヒト)を検索した場合は、当人のブログだったり、プロフィールが書かれたページが「適切度」が高いと云えます。
商品名(モノ)を検索した場合は、その商品を製造しているメーカーや販売店の商品紹介ページが「適切度」が高いと判断されやすいようです。
では、「釣り」のような趣味(コト)の場合はどのように適切度を判断するのでしょうか?
こうしたコトには、他にも「カレーの作り方」「アトピー 治療」「半導体製造」などさまざまなものが思い浮かびますが…。
2つの要素で「詳しい人」を順位づけする
Googleは大きく2つの要素から適切なものかどうか評価していると云われています。
- そのホームページに、検索ワードに関する情報が豊富に盛り込まれているかどうか
- 他のホームページからリンクされているか
ある程度SEOを意識している方にはおなじみの要素です。
SEO的な用語で言い換えると次のようになります。
- 内部要因
- 外部要因
すごく短絡的に考えると、次のようなものが評価されることになります。
- その検索ワードがたくさん書かれたホームページ
- たくさんのサイトからリンクを張ってもらっているホームページ
では、釣り名人の例を考えながら、もう少し詳しくみていきます。
釣り名人は釣りを語り、人に語られる
釣り名人が「町で一番釣りに詳しい」とされているプロセスは、検索エンジンが順位づけする仕組みとよく似ていると最初に書きました。
では、釣り名人に内部要因、外部要因をあてはめて分析してみます。
- 釣りのことをいっぱい話す
- みんなが知っている(有名人)
…これは、松方弘樹さんのことですね。
では、松方弘樹さんが「釣り」で検索して上位に表示されるかというと、実際にはそうでもありません。
もう少し分析を進めてみます。
- 釣りに関して広範な知識を披露している。また釣りと切っても切れない深い関係の魚についても詳しい
- 多くの人に「釣りのことならあの人」と認識されている
…まだ松方弘樹さんのことですね(松方弘樹さんでも、もちろん良いのですが)。
ここで注目したいのは、2番目の「多くの人に「釣りのことならあの人」と認識されている」です。
多くの人に認識されるためには、何が必要でしょうか。
知名度でしょうか。テレビ番組で釣りをしているのは有利かも知れませんが、それは必ずしも釣りが詳しいことを示すものではありません(釣りが好きなことは示せますが)。
毎朝、駅前に立って「私は釣りが大好きです」と演説したらどうでしょうか?
「釣りが好きな人なんだな」と認識してもらえるかも知れませんが、釣りについて一番詳しいかどうかは、やっぱりわかりません。
釣り名人が「町で一番釣りに詳しい」とされているのは、「釣りが好きな人」からも詳しいと思われているからです。
もう一度、釣り名人が「町で一番釣りに詳しい」と呼ばれているの図を見てください。
ここで、Dの釣り人、Eの釣り仙人からも詳しいと云われているのがAの釣り名人です。
Bの犬の散歩をしている人、Cの井戸端会議をしている妙齢の女性たちだけでなく、D・Eの支持を集めていることが重要なのです。
まとめると次のようになります。
- 釣りに関して広範な知識を披露している。また釣りと切っても切れない深い関係の魚についても詳しい
- 釣り愛好家や専門家を含め、多くの人に「釣りのことならあの人」と認識されている
余は如何にして釣り名人となりしか
最後に、釣り名人にインタビューし、これまでの苦労を聞かせてもらいました。
--最初から有名だったんですか?町の名物男とか?
「そうではありません。むしろ内気な方で、一人で釣りをしているのが好きな寡黙な男でした」
--家業の釣具店を継いだのが転機になったと聞きました
「郊外の大手釣具店におされて、閑古鳥が啼いている状態でした。そこで、私が町で一番釣りに詳しいと思ってもらえれば、相談も含めてお客さんに来てもらえると思ったのです」
--最初に何からとりかかったのですか?
「『釣り、釣り』『釣り好きなんだよねー』と町を歩きながら聞こえよがしに呟いてみました」
--効果はどうでしたか?
「みんなに距離を置かれるようになりました」
--逆効果だったと?
「ホームページにもし、『釣り』『釣り』って1000回くらいひたすら書いたあったら、釣りに詳しいというより、ちょっとサイコでヤバい感じでしょう? それと同じで、ひたすら『釣り』って呟いてる人って怖いでしょう?」
--引かれますよね。
「それで、もっと普通に会話する中で、さりげなく釣りの話題を含めるようにしました。町でかわいいコをみかけたら『今日は釣り日和だから、俺と一緒に町をトローリングしない?』って声をかけるとか」
--内気で寡黙じゃなかったんですか?
「コンビニでレジのお姉さんが『20円のお釣りになります』って云ったら、『えっ?釣り?』ってはしゃいでみせるとか」
--やだな、この人
「だんだん、身近な人から釣りのことを相談されるようになってきました。相談は竿の選び方から、今度どこそこへ行くけど、どんなのが釣れる?とか。すぐには答えられないことも多かったんです。それで、携帯に魚の画像を保存して、自分なりの釣り図鑑を作ってみたんです」
--どんな情報が入ってるんですか?
「魚の写真と、このへんだとどこで釣れるとか、仕掛けはどうしたとか、バター焼にすると美味しいとか」
--『不思議なマリナー』みたいですね(※川原泉のマンガ『空の食欲魔神』に収録されている短編。釣り好きの男女が釣りをしては、この魚はバター焼きにすると美味しいよね、と調理方法を解説する)
「釣りの初心者には、そういう情報も入りやすいかな、と思ったので。
それに、釣り人は自分と仲間だけで行動しがちですが、家族も含めて楽しめるような情報を出したのが良かったんだと思います。単に自分の好きな釣り方だけじゃなくて、いろんな釣り方も押さえるようにしました。」
--それで次第に評判になってきた?
「まだまだでしたね。それで、私が釣りに詳しいことをもっといろんな人に知ってもらうために、『釣りが好き』っていうキャップをかぶって歩くようにしました。パッと見て、釣りに詳しいってことがわかるように」
--それは、ホームページでいうとtitleタグにキーワードを含めるのと同じですね?釣りに関する情報を持っていることをみんなに知らせるための基本的な作法ですよね?
「あ、釣りの人だ!って思ってもらえますからね。さかなクンには『ギョギョ!』って云われましたけどね」
--釣り好きの人たちにはどうやってアプローチしたんですか? お金を払ったりしたんですか?
「お金は遣ってません。常連のお客さんからクチコミで他の釣り人にも私のことを伝わったみたいですね。初心者に教えてやってよ、と紹介してもらうことも増えてきました」
まとめ
釣り名人のプロセスをもう少しSEOにちかづけてまとめます。
- 釣り、およびその関連情報(魚の調理方法など)を豊富に用意した(テキスト、画像を盛り込んだテキストを作成した)。
- 釣りに関する情報を持っていることを知らせるため、キャップやTシャツに「釣りが好き」と入れた(「釣り」に関するページだと検索エンジンにわかるようにHTMLを記述した)
- 釣り人から相談を受けたり、初心者を紹介されるようになった(釣り関係のホームページやブログからリンクされるようになった)
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ここでは、なるべくわかりやすくするため、「順位づけ」を中心に説明しましたが、SEOとは検索エンジンで順位を上げることだけではありません。むしろ、そればかりを訴求するSEO会社があれば疑問に思った方がよいでしょう。
SEOの本質については次回以降に触れていきます。
また、「価値あるコンテンツを発信し、外部からリンクされるようなホームページを作っていきましょう」という一般論に終わらない実践的な方法についても今後お伝えしていきます。